SaaS指名検索の増やし方とは、SNSや比較記事・ウェビナーで接触回数を積み重ねて認知を蓄積し、比較検討リストと生成AIの回答の両方に自社名が挙がる状態を作ることです。指名検索はすでに候補として認識されたうえで行われる検索のため、一般的な業界KWでの検索よりコンバージョン率が高くなる傾向があります。しかし「良いサービスを作れば自然に指名検索が増える」というのは誤解で、接触の設計とAI時代の情報構造という2つの仕掛けが欠かせません。本記事では、BtoB購買データをもとに指名検索が伸びない原因と、増やす5つの施策を解説します。

この記事は、BtoB・SaaS企業のマーケティング担当者・経営者で、広告経由の流入は増えているのに社名での検索が伸びず、指名検索を増やす具体的な打ち手を探している方向けです。

※ 2026年8月時点の情報です。

この記事でわかること

  • SaaS指名検索とは何か、一般KW検索と何が違うか
  • BtoB購買データで見る、指名検索の強化が今必要な理由
  • 指名検索が伸びない3つの原因と、増やす5つの施策
  • 指名検索とAI引用(LLMO)の関係、KPIの見方と着手の3ステップ

SaaS指名検索とは

SaaS指名検索とは、検索者が自社のサービス名や社名を直接入力して検索する行動のことです。

SaaS指名検索とは、「〇〇(サービス名) 料金」「〇〇 評判」のように、検索者がすでに認知している特定のSaaSサービス名・社名を直接入力する検索のことです。「経費精算 ツール」のような一般KW検索が「まだ候補を知らない状態からの比較検討」であるのに対し、指名検索は**すでに候補として意識したうえで詳細を確認する行動**であるため、コンバージョン率が大きく高くなります。

SaaS比較記事の作り方で解説した比較サイト対策は「比較の土俵に上がる」施策ですが、指名検索の強化は一歩進んで「比較の土俵に上がる前から名前を思い出してもらう」施策です。両者は競合ではなく、指名検索が増えるほど比較記事内でも有利な位置で言及されやすくなる補完関係にあります。

なぜ今SaaS企業に指名検索の強化が必要なのか

BtoB購買では営業接触前に候補企業のリストアップが完了しており、そこに載れるかが指名検索の分岐点です。

株式会社IDEATECHと元Microsoft業務執行役員・北川裕康氏(デマジェン総研)が2026年4月16日に発表した「BtoB大型購買の実態調査」(年間契約300万円以上のBtoB商材導入に関与した307名対象)によると、営業接触前に候補企業をリストアップ済みだった割合は約9割、最終比較段階で「2〜3社」まで絞り込まれる割合は約7割にのぼります。検討先のリストアップに使われた情報源は、「ベンダー主催のウェビナー・セミナー」が42.3%、「ホワイトペーパー・資料」が41.0%、「導入事例」が33.9%という結果でした。

データ 数値 出典
営業接触前に候補をリストアップ済み 約9割 IDEATECH×デマジェン総研 BtoB大型購買実態調査2026
最終比較段階で2〜3社に絞り込み 約7割 同上
リストアップの情報源「ウェビナー」 42.3% 同上
リストアップの情報源「ホワイトペーパー」 41.0% 同上

つまり、営業担当者が接触した時点で既に土俵は固まっており、それ以前の接触の蓄積が指名検索の量を左右しています広告予算を増やしても、指名検索という「思い出される資産」が積み上がっていなければ、次の商談機会にはつながりません私たちが支援先のSaaS企業を見ていても、広告経由のリード数は伸びているのに指名検索数だけが横ばい、という相談が最近増えています。広告は「今すぐ客」を刈り取る施策であるのに対し、指名検索は数ヶ月先の検討フェーズに備える資産形成であるという役割の違いを整理できていないことが、相談の背景にあるケースがほとんどです。

SaaS指名検索が伸びない3つの原因

指名検索が伸びない典型パターンは、接触不足・比較検討リスト漏れ・計測不在の3つです。

SaaS指名検索が伸びない3つの原因: 接触回数が少なく比較検討の場面で思い出されない、比較検討リストに載る前にAIやメディアで素通りされる、指名検索を計測せず打ち手が偶然任せになっている
SaaS指名検索が伸びない3つの原因

原因1: 接触回数が少なく比較検討の場面で思い出されない。広告を単発で出しても、検討フェーズに入った瞬間に社名を思い出してもらえなければ指名検索にはつながりません。

原因2: 比較検討リストに載る前にAIやメディアで素通りされる。前章のデータの通り、リストアップの主な情報源はウェビナー・ホワイトペーパー・導入事例です。これらが整っていないと、AIの回答からも比較サイトからも候補として拾われません。

原因3: 指名検索を計測せず打ち手が偶然任せになっている。指名検索数を追わなければ、どの施策が効いたのか分からず、広告予算だけを増やす対応になりがちです。

注意: 「良い製品を作れば自然に指名検索が増える」はNG
製品の質と認知の蓄積は別物です。接触設計を後回しにすると、機能面で優れていても指名検索は伸びません。
指名検索対策のNG例とOK例: NG例は広告予算だけに集中させる・指名検索数を計測しない・自社サイトの改善だけで完結させる、OK例は接触チャネルを複数組み合わせる・GSCで指名検索数を継続確認する・比較サイト・AI引用にも対応する
指名検索対策のNG例とOK例

SaaS指名検索を増やす5つの施策

指名検索を増やすには、接触回数の確保・第三者メディア露出・比較材料の整備・AI引用構造・計測という5つを組み合わせます。

SaaS指名検索を増やす5つの施策: 接触回数を増やすでSNS・広告で複数回接触する、第三者メディアに載るで比較サイト・業界メディアに掲載、比較で選ばれる情報を作るで導入事例とホワイトペーパー、AI引用の構造を整えるで比較表・FAQ・数値ファクト、指名検索を計測するでGSCのブランドクエリで追跡
SaaS指名検索を増やす5つの施策

施策1: 接触回数を増やす

SNS・ウェビナー・広告など複数チャネルで繰り返し接触し、検討フェーズに入った瞬間に名前を思い出してもらえる状態を作ります。ウェビナー集客の方法は接触回数を稼ぐ代表的な施策です。

施策2: 第三者メディア・比較サイトに載る

自社サイトだけでなく、業界メディアや比較サイトへの掲載を増やします。検討者は第三者の情報を経由して社名を知ることが多く、指名検索の入口になります。

施策3: 比較で選ばれる情報を作る

導入事例とホワイトペーパーは検討先リストアップの情報源として上位に挙がる資料です。数字を伴う実績と、検討者の疑問に先回りした資料構成。この2点が比較段階で選ばれるかどうかの分かれ目です。ホワイトペーパーの作り方を参考に、比較段階で選ばれる具体的な資料を用意してください。

施策4: AI引用の構造を整える

比較表・FAQ・出典付き数値ファクトを整え、生成AIの回答内で社名が挙がる状態を作ります。BtoB AI検索対策(LLMO)で解説した施策がそのまま指名検索の入口強化にもなります。

施策5: 指名検索を計測する

Google Search Consoleのクエリレポートで社名を含む検索を継続的に確認し、効果が出ている施策を見極めます。

5つの施策のうち、最も早く効果が見えるのは施策3の比較材料の整備です。導入事例とホワイトペーパーは制作から公開までの期間が短く、検討先リストに載る確率をすぐに引き上げられます。地味だが着手しやすい施策から始めるのが近道です。

SaaS指名検索とAI引用(LLMO)の関係

指名検索とAI引用は対立するものではなく、AIの回答に社名が挙がることが新しい指名検索のきっかけになる関係です。

StockSun株式会社認定パートナーの石田健太氏が2026年4月28日に発表した調査(セールス・マーケティングSaaS業界31社を対象に、ChatGPT・Gemini・Perplexityの3モデルへ30種類の質問を3回ずつ、合計270試行実施)によると、Google指名検索で業界2位のブランドがAI推薦では6位に低下する一方、17位のブランドが3位に上昇するケースも確認されました。さらに、対象31社のうち3モデルすべてで一度も推薦されなかったブランドは約3割にのぼり、AIが参照するURLの大半は自社サイトではなく比較サイト・業界メディア・ニュースなど第三者メディアからの引用だったと報告されています。調査対象は31社・270試行という規模のため断定的な業界全体の傾向とまでは言い切れませんが、Google順位とAI推薦順位が一致しないという方向性は、複数のAIモデルで共通して確認された点として参考になります。

比較項目 従来の指名検索対策 AI引用(LLMO)を含む指名検索対策
認知の入口 広告・SNS・検索結果 上記に加えAIの回答内での言及
評価される情報源 自社サイト中心 比較サイト・業界メディアなど第三者中心
計測指標 GSCの指名検索数 GSCの指名検索数+AI経由セッション

この調査結果は、指名検索の強化を自社サイトの改善だけで完結させると、AI経由の新しい入口を取りこぼすことを示しています。第三者メディアへの露出は、SaaS比較記事の作り方BtoBリード獲得の方法で解説した施策とも重なる部分が多く、まとめて着手すると効率的です。Google検索順位とAI推薦順位の乖離が生まれるのは、両者が参照する情報源の重なりが小さいためであり、自社サイトのSEO対策だけを続けていても、AI経由の指名検索は増えない点に注意してください。

SaaS指名検索の伸びを測るKPIの見方

指名検索の効果測定は、検索数の推移とAI経由セッション、そこからのCV数の3つで評価します。

私も実際に支援先のGSCを確認する際、まず指名検索クエリの絶対数より前月比の増減を見るようにしています。母数が小さい段階では、絶対数より変化の方向性の方が施策の手応えを判断しやすいためです。Web担当者Forumが2025年12月4日に報じた記事によると、Googleは2025年11月20日にSearch Consoleの検索パフォーマンスレポートへ「ブランドクエリフィルタ」を導入すると発表しており、ブランド関連の検索とそれ以外を自動で分離し、インプレッション・クリック数・掲載順位・CTRを個別に確認できるようになります。

指標 確認場所 見るポイント
指名検索数(クエリ) GSCのクエリレポート/ブランドクエリフィルタ 社名・サービス名を含む検索が前月比で増えているか
AI経由セッション数 GA4(参照元) chatgpt.com・perplexity.ai等からの流入があるか
指名検索経由のCV数 GA4(コンバージョン) 検索数だけでなく資料請求・問い合わせに至っているか

何から着手する?SaaS指名検索強化3ステップ

着手の順番は、現状の指名検索数の把握・比較材料の整備・接触チャネルの拡大という3ステップが現実的です。

ステップ1: 現状の指名検索数を把握する

GSCのクエリレポートで社名・サービス名を含む検索の直近3ヶ月の推移を確認し、施策の起点を決めます。

ステップ2: 比較材料を整備する

導入事例とホワイトペーパーを優先的に整え、検討先リストに載る確率を引き上げます。ゼロから作るより、既存の事例に数値ファクトを足す方が早く着手できます。

ステップ3: 接触チャネルを拡大する

ウェビナー・SNS・比較サイト掲載など接触の機会を増やし、検討フェーズに入る前の認知を蓄積します。完璧な網羅より、検討先リストに載る確率を上げる施策から順に手を入れる速さが成果につながります。すべてのチャネルを同時に立ち上げる必要はなく、まず自社の商材と親和性の高いチャネルを1〜2個選び、3ヶ月継続してから拡大するほうが、効果測定の精度も上がります。3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月という3つの節目で指名検索数を見比べると、施策の効き目の判断がしやすくなります。

3ステップを整理すると次のとおりです。

  • 1ヶ月目: GSCで現状の指名検索数を把握する
  • 2〜3ヶ月目: 導入事例・ホワイトペーパーを整備する
  • 4ヶ月目以降: ウェビナー・SNS・比較サイト掲載でチャネルを拡大する

判断基準はシンプルで、指名検索数の前月比が3ヶ月連続でプラスかどうかの一点です。

よくある質問

指名検索とは何ですか?一般的なSEOのKWとの違いは何ですか?

指名検索は社名やサービス名での検索、一般KWは業界用語での検索です。指名検索の方がCVRは高くなります。

SaaS企業が指名検索を増やすにはどれくらいの期間がかかりますか?

接触の蓄積が前提のため、数週間ではなく数ヶ月単位で継続する取り組みが必要です。

指名検索数はどこで確認できますか?

Google Search Consoleのクエリレポートと、新設のブランドクエリフィルタで確認できます。

AI引用と指名検索には関係がありますか?

関係があります。AIの回答に社名が出ることが、指名検索の新しいきっかけになっています。

予算が少ない中小SaaS企業でも指名検索は増やせますか?

増やせます。比較記事やホワイトペーパーなど接触機会を増やす施策から着手できます。

指名検索が増えたのに商談化しない場合はどうすればよいですか?

検索後の着地ページに比較表や事例、CTAが揃っているか確認し、導線を見直してください。

まとめ: SaaS指名検索は「接触の蓄積」と「AIに拾われる構造」の両輪

SaaS指名検索の増やし方は、ウェビナー・比較記事・ホワイトペーパーで接触回数を積み重ねながら、比較表やFAQといったAIが引用しやすい構造を整え、GSCで効果を計測するという一連の設計です。まずはステップ1の現状把握を今日中に済ませてください。

AI引用の土台作りはBtoB AI検索対策(LLMO)とは?選ばれる5つの施策、比較段階での選ばれ方はSaaS比較記事対策とは?AIに引用される5つの施策でも解説しています。

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